映画レビュー「すばらしき世界」

趣味・生きがい

本日映画「すばらしき世界」を鑑賞してきました。

映画『すばらしき世界』大ヒット上映中
名優:役所広司×監督:西川美和 映画『すばらしき世界』大ヒット上映中!実在した男をモデルに「社会」と「人間」をえぐる問題作

私は前評判がいい映画を観るときは期待し過ぎないようにして観に行くのですが、この映画は本当に良かったです!

目頭が熱くなって、温かく、爽やかな気持ちになれる映画でした。

映画に関してはただの素人ですが、私なりの視点で感想を書いていきたいと思います。

なお、若干のネタバレを含みますので、ご注意ください。

「すばらしき世界」あらすじ

物語は、殺人を犯して刑務所に収監された主人公・三上が、刑期満了で社会に復帰するところから始まります。身元引受人の弁護士・庄司を頼って東京に行った主人公は更生を決意し、住む家を探し、生活保護を受けつつ仕事を探し始めます。

そしてそれと同時に自分を施設に預けていなくなった母親を探したいと、テレビ局に相談を持ちかけます。そのときにテレビ局に送ったのが自身の「身分帳」の写しでした。「身分帳」というのは受刑者の生い立ちや受刑歴などが書かれているものです。本来門外不出のものらしいのですが、三上は裁判の際、被告人の権利として要求し、書き写したらしいです。

テレビ局から依頼を受けた小説家志望の青年・津乃田は取材のため三上のもとを訪れ…そんな場面からこの物語は展開していきます。

「リアル」な登場人物

この映画のポイントは、登場人物が皆本当にリアルだということです。

「100%の善人なんていない。自分本位になってしまうこともある。でもだからといって偽善者ではない。あたたかく、やさしい。それが人で、それでいいではないか。」そんなふうに語りかけられているように私には感じられました。

三上は決してどうしようもない悪人ではない。ただ、善人でもない。良くも悪くも素直で、自分を犯した罪を反省していないような言動も見られます。(殺人に関しては正当防衛と言えなくもないのですが、それ以前にも様々な犯罪に手を染めてしまっています。)

三上の身元引受人となった弁護士の庄司は「身元引受人は趣味みたいなもの」と言う好々爺。これだけだとステレオタイプの善人のように聞こえるのですが、三上よりも孫との時間を優先するなどちゃんと人間らしい(?)一面も描かれています。

その他挙げればきりが無いのですが、三上を取り巻く「善い人達」はみんなとても親切で、でも人間臭いんですよね。

うまくいえないのですが、現代社会はちょっとした言動が批判の対象になってしまって、常に神経を張り巡らせて「善い人」でいなければならないというプレッシャーと戦っているような気がします。

でも、人間誰しも「面倒くさい」と思ってしまうことや、自分が可愛くなってしまうこともあります。そんな時「善い人」に相応しくない言動をとってしまうこともあるでしょう。

1の言動で、その人の本質である9の「善」が台無しになってしまうような…。

でも、この映画からはそんなことは感じないのです。

ちょっと「あー。」と思ってしまうことがあっても、トータルで皆「善い人」と感じることができるのです。完璧じゃない。でもそれでその人の人間性が貶められるわけではない。

そして登場人物は自然とそれがわかっているように思うのです。

1度冷たい態度をとられたからって、嫌な言葉を投げかけられたからって、あなたを嫌いにはならない。自分に対して真摯に向き合ってくれていることはわかっているよ。

そんな思いが全ての登場人物から伝わってくるようで、温かい気持ちになれました。

社会復帰の難しさ

おそらく、この映画のメインテーマである「罪を犯した人間の社会復帰の難しさ」。

ここに関しては私以外の人達がいろいろと感想を書かれているとおりなのですが、これは本当に考えさせられました。

この映画の素晴らしいところは、社会復帰が難しい理由を本人と社会の両面からしっかりと描いている部分だと思います。

三上がどれだけ更生しようと思っても、社会の制度がそれを阻む。

ただ、社会だけが悪いのではなく、三上も正義感からではあるもののカッとして暴力を奮ってしまうなど、社会に適応できない部分もある。

どちらか一方を悪者にしない描き方も、この映画の素晴らしいところだと思います。

あたたかい世界

まとめると、この映画はあたたかい世界が描かれています。

ただ、テーマがテーマであるだけに、暴力的なシーンもあり、思わず目をそむけてしまった部分もありました。

正直、三上のような人間は苦手だな…と思う部分もあります。

ただ、それでも世界はあたたかく、すばらしいのだと感じられる、素晴らしい映画でした。

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